腎臓 研究内容

基礎的研究

1. 腎における核内転写調節因子PPARαに関する研究

本学大学院代謝制御学講座との共同研究により、核内転写調節因子の一つであるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α型(PPARα)の腎における生理的意義、腎病変進展への関与について、PPARαノックアウトマウスを用いた実験により解析している。この研究により、PPARαは近位尿細管細胞のエネルギー産生や蛋白再吸収機能維持に必須な因子であることを解明することに成功した。また、腎炎に伴う糸球体障害および尿細管障害の進展過程において、PPARαは脂肪酸代謝機能の亢進によるエネルギー産生の恒常性維持・抗炎症作用・抗酸化作用・抗アポトーシス作用により腎障害の進展を抑制する可能性を見出した。現在は、腎不全時にも使用可能なPPARα活性化剤の開発と、その臨床応用についての研究を継続的に行っており、腎実質細胞におけるPPARαの活性化を介した新たな腎疾患治療の可能性について追及している。

2. 腎疾患における複合糖脂質異常についての研究

本学大学院代謝制御学講座との共同研究により、腎不全病態マウスやヒト透析患者の血清中で複合糖脂質の一種であるスルファチドの血中濃度が著明に減少していることを発見した。スルファチドは抗血小板作用や抗凝固作用を持つ内因性物質であるので、透析患者における血清スルファチド異常は特有の病態をもたらす可能性が考えられる。現在、血清スルファチド異常が腎不全患者の心血管病に関連する可能性について、臨床統計的に解析している。また、腎不全病態におけるスルファチド低下メカニズムについて、全身的酸化ストレスの関連を中心に解析している。

3. 尿細管障害におけるレニン・アンジオテンシン系の関与についての研究

尿細管障害におけるレニンアンジオテンシンシステムの関与について、尿細管障害マウスモデルを用いて解析している。

臨床的研究

1. 透析患者の心血管病リスクに関する研究

透析患者の心血管病の発症リスクに関する観察研究を継続的に行っている。臨床的に有用な新規心血管病予測バイオマーカーの開発を行っている。また、既存の動脈硬化推定因子との関連性などについても統計的解析を行っている。

2. バスキュラーアクセスに関する研究

バスキュラーアクセスに関連する体液異常について、バイオインピーダンス法を用いた解析を行っている。またシャント過剰血流に伴う様々な病態についての研究を行っている。この研究により、腎不全患者における最適条件のバスキュラーアクセスの基礎的情報を得ることを目的としている。

3. IgA腎症に対する扁摘+ステロイドパルス療法の治療効果と臨床病理学的予後関連因子に関する研究

信州大学腎臓内科では、IgA腎症に対し扁摘+ステロイドパルス療法を積極的に試みており、高い治療成績を得ているが、その治療効果と関連する臨床病理学的予後関連因子を明らかにすることを試みている。

4. 腎機能検査に関する研究

信州大学腎臓内科では、腎生検患者を中心にルーチンでイヌリンクリアランスの測定を行っている。このイヌリンクリアランスのデータを用いて、日本人の慢性腎臓病患者(CKD)の最適なGFR推定式および他の検査法の評価や正確な腎機能評価に基づく予後予測に関する検討を行っている。

5. 慢性腎臓病患者(CKD)の実態調査に関する研究

長野県内の関連病院との共同研究として、慢性腎臓病(CKD)の実態調査を施行中である。CKD患者の予後改善のための管理法についての検討を行っている。

6. 腹膜透析管理に関する研究

信州大学腎臓内科では腹膜透析管理も行っており、治療の質向上のための臨床研究を行っている。

7. 各種血液浄化療法に関する研究

信州大学腎臓内科は、当院附属病院で施行されたほとんどの血液浄化療法(CHDF,PMX,PE,DFPP,CARTなど)を施行している。これら様々な血液浄化療法の臨床効果に関連する因子についての解析や、より効率的な血液浄化療法についての臨床研究を行っている。

8. 急性腎障害(AKI)の予後改善、急性血液浄化療法の質改善のための研究

信州大学腎臓内科では、集中治療部門と協力して、ICUでのAKIの予防及び治療や急性腎不全に対する急性血液浄化療法の質改善を目指したより効果的な治療法についての臨床研究を行っている。

9. 多施設共同研究への参画

信州大学腎臓内科は、日本腎臓学会が主導する厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性腎疾患に関する調査研究」疾患登録・調査研究分科会に参画しており、腎臓病レジストリーの構築および疫学調査を実施している。

10. 医師主導臨床研究への参画

信州大学腎臓内科は、腎性貧血に対する多施設共同介入研究に参画している。

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